2013年7月22日第1回口頭弁論 「よど号」国賠報告

被告東京都が答弁書-「捜査の密行性」を理由に「これ以上、答弁するつもりはない」

「よど号」国賠を支える会(準)事務局

平壌在住の「よど号」の3人(魚本公博、森順子、若林佐喜子)を原告としたヨーロッパ拉致でっち上げ逮捕状の撤回を求める国賠の第1回口頭弁論が7月22日、午後1時10分から東京地裁民事30部(菅野雅之裁判長、篠原礼裁判官、樺山倫尚裁判官)411号法廷で行われた。傍聴人は支援者、ご家族、麻生邸リアリティ-ツアー国賠など国賠ネットの仲間、報道関係者を含めて35名。傍聴席は、ほぼ満席(80%)。被告東京都は代理人5名、原告代理人は前田弁護士、渡邊弁護士の2名。民事30部は横浜事件国賠の係属部、菅野雅之裁判長の訴訟指揮が注目されたが、当面は門前払いはなさそうだ。  4月25日提出の訴状に対する被告東京都の答弁書(6月21日)、原告第一準備書面(7月18日)の陳述が行われた。また、原告提出の証拠関係(甲1~16号証)は、全て採用され、陳述書(甲1~4号証)については原本(平壌で押印)の確認が行われた。  原告第1準備書面の求釈明に対して、被告東京都は「これ以上、答弁するするつもりはない」との意見、暗に門前払いを求めたものだ。菅野雅之裁判長は「原告は都の意見に対して意見は・・・」。これに対して原告は次回口頭弁論(9月19日)までに、被告都への意見と第1準備書面を補足した第2準備書面を提出(9月12日提出期限)し反論していくことになった。

原告が求めた5項目の釈明と被告答弁

原告は5項目(下記①~⑤)の釈明を求めた。親告罪に関して、同罪は起訴の要件として告訴権者による告訴が必要となるが、

① 有本恵子、石岡亨、松木薫から、警視庁警察官に対して、上記被疑事実に関する告訴がなされているのか

② 被害者らからなされていないとすれば、これに代わる告訴状を得ているのか、あるいは、得る見込みがあるのか

逮捕状の発付及び原告らを国際手配した経緯に関しては、

③ スペインのマドリードに滞在していた「訴外石岡ら」とあるが、「ら」とは、石岡亨と松木薫ということか

④ 「ら」が、松木薫を含むということであれば、松木薫も昭和55年5月ころにマドリードに滞在し、かつ、マドリードから、忽然と姿を消したことになるが、そのように理解してよいか

「捜査の密行性」を理由とする国賠請求の可否については、

⑤ 「捜査の密行性」は、国賠請求それ自体を封ずる理由にはなり得ない。原告の主張を踏まえて、改めて、この点に関する被告の見解

 

上記①~⑤の求釈明事項に対して被告は6月21日提出の答弁書以上の「答弁するつもりはない」と事実上、拒否した。被告の主張は、逮捕状の更新が繰り返されているにすぎない時点で国賠請求を許すと、民事事件の審理のために、捜査の内容や捜査資料の開示を余儀なくされ、証拠隠滅などの捜査遂行に重大な支障が生ずるというもの。「捜査の密行性」の主張を繰り返しているだけだ。

 

「捜査の密行性」についての原告の主張

第1準備書面で展開されているが、要約するとこうだ。被告が指摘する刑事訴訟法において一定の制度的保障があり、かつ、民事訴訟法においても、文書提出命令における除外対象として「刑事事件に関する訴訟記録」が規定されているなど、刑事上も民事上も、現行法において制度的に保障されている。被告の主張とはまったく逆に、「捜査の密行性」を理由とした、制度上の制約の中で、逮捕状請求の違法を理由とする国賠訴訟を審理すればよいだけのことだ。国賠請求自体を許容しないとする理由はない。余りにも政策的な解釈である。次回口頭弁論では更に詳細な反論を展開していくことになる。

 

記者レクチャー

口頭弁論終了後、弁護士会館で記者レクチャーを行った。報道各社(ほぼ全社)、支援者を含め20名が出席。前田、渡邊両弁護士が提訴から本日までの経過、特に争点のポイントについての説明を行った。①本件は親告罪であり、親告権者から親告があったのかどうか、釈明を求めている。もともとは根拠ない逮捕容疑である ②「捜査の密行性」をもとに訴訟は出来ないとする被告都の姿勢(答弁書)は不当である ③松木薫に対する逮捕状容疑については全く根拠が明らかにされていない、など逮捕状請求行為は違法・不当であると本国賠の意義を説明、被告東京都を厳しく批判した。

支援者(山中氏、井上)からも発言があった。平壌の原告らはヨ-ロッパ拉致の関与を全面否定している。逮捕状の撤回がない限り、平壌在住の6人の帰国は当面ないであろう。国賠では「真実」を武器に、「事実と証拠」に基づき武器に闘っていく。国賠と同時に原告らの手記をまとめた鳥越俊太郎氏による検証『”拉致疑惑”と帰国』が河出書房新社から出版された。是非、読んでいただきたい。また、外務省に対して2002年、2004年の日朝実務者会議議事録の情報開示の申し立てを行ったが、「安全保障上の理由」で非開示との通知がきた。不当である。開示は「真相究明」には必要なことだ。記者レクチャーは約30分間。

 

支援者会議から「よど号」国賠を支える会(準)へ

支援者会議は2013年7月17日の同会議において「よど号」拉致でっち上げ逮捕状の撤回を求める国賠を支える会準備会<略して「よど号」国賠を支える会(準)としてスタートすることになった。年内には正式発足させ、集会を持ちたいと思っている。(投稿 inoue)

 

■次回(第2回)口頭弁論

日時:2013年9月19日(木) 午前10時45分開廷

場所:東京地裁民事30部 611号法廷

東京地裁 http://www.courts.go.jp/tokyo/about/index.html  弁論終了後、記者レクチャーを兼ねた報告(弁護団)を予定

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