裁判傍聴の仕方

【場所と日時を確認しましょう】

まず、どの裁判が何日の何時、何処の裁判所の何号法廷で行われるか確認しましょう。

国賠ネットワークでは、会員などの国賠裁判がいつどこで開かれるから「ぜひ傍聴して欲しい」という案内が「国賠ネットワーク通信」や、ホームページの「予定表」に載っています。 たとえば、「東京地裁709号法廷で、m月d日の11:30~」というように法廷と開廷日時が書かれているはずです。

ここでは東京地裁709号法廷で行われる国賠裁判を傍聴するという想定で案内します。他の裁判所でも、傍聴の仕方は基本的に同じなので参考にしてください。

【裁判所への行き方】

東京地裁は地下鉄の「霞ヶ関」駅近くです。

各地の裁判所へのアクセス方法は「最高裁判所・各地の裁判所」のページに案内されています。

【裁判所に入ります】

東京地裁は東京高裁との合同庁舎です。 歩道から入ったところから庁舎内での写真撮影は禁じられています。

建物内へ入る入口は2種類あり、裁判所関係者や弁護士の入口と一般市民の私たちの入口があります。一般の市民の場合は、空港の搭乗口にあるような金属探知機をくぐり、鞄などの手荷物はベルトコンベアに載せられ、X線透視されます。

中・高校生など団体の見学も一般市民用の入口を通ることになるので、一時的に長い列ができて待たされることもあります。開廷時刻が近づいている場合など、イライラすることになるので、10〜15分の余裕がほしいところです。

1階ロビーの奥中央に、案内デスクがあり、法廷への行き方を聞くことができます。また、当日に開廷される法廷と事件名などを一覧表できる事件表のファイルを見ることもできます。

【傍聴券が必要になることも】

傍聴希望者が多数になって全員の傍聴は不可能ということが予想される時は、傍聴券が発行されます。抽選で当選した人だけが傍聴券を受け取って傍聴できます。

東京地裁の場合、傍聴券の抽選は入り口のすぐ外で開廷の30分ほど前に行われます。 抽選になるかどうか、抽選を何時から行い、何人の傍聴を認めるかは事前に当事者に知らされますので、傍聴の案内で知ることができます。開廷直前に裁判所に着いたら抽選が終わっていて傍聴できなかった、などと言うことがないよう必ず事前に案内などで確認しましょう。

【法廷の前へ】

709号法廷なのでエレベーターで7階に上がり、709号法廷前の廊下に向かいます。

法廷の入口には「当事者入口」と「傍聴人入口」がありますが、傍聴人入口から入ります。

廊下の壁に、その日の法廷のスケジュールが書かれています。事件番号、訴訟の種類、原告、被告、そして裁判所の民事XX部、裁判官、書記官氏名なども掲示されています。入る前に念のため確かめて、これを書き取っておくと後で傍聴記などを書く時に重宝します。

入口の扉にはのぞき窓があり、ここから法廷内をのぞくこともできます。

通常は法廷の進行に関わらず、傍聴席への出入りは自由にできるようですが、冒頭にテレビカメラが入って映像を2分間撮るような場合は制限があるかもしれません。

【法廷の中は】

法廷

裁判官が3人の場合も(裁判所HPより)

法廷では向かって奥の少し高い位置に裁判官が座ります。

手前の平場の左側に原告とその代理人が、右側に被告とその代理人が座ります。

国賠裁判の被告の代理人は国、公共団体の代理人ですが、たとえば、富山冤罪事件・氷見国賠裁判では富山県、国などの代理人合計16名が毎回居並ぶケースもありました。

【裁判が始まります】

さて、いよいよ法廷で傍聴です。 民事裁判は書面審理も多く、時によっては代理人から書面が提出されて「原告の準備書面XX、陳述でよろしいですね」と裁判長が確認し、代理人が「ハイ」と応えて、書面を法廷で読み上げたことにして、後は次の期日の調整など数分で終わってしまう場合もあります。

他方、証人尋問が何時間も行われて、長い時には午前と午後を通して行われる場合もあります。

ですから、時間的余裕を持って傍聴したり、前回の傍聴報告や、今回の傍聴呼びかけから進行具合を想定して出かけたりするのが良いかもしれません。

また、次回開廷の日時や法廷番号が告げられるので、同じ事件を継続して傍聴すると内容の理解も深まると思います。

書面審理で裁判で何が行われたのか分からないといった場合、裁判後に原告とその代理人が場所を移して説明会を開くこともしばしばあります。裁判の争点が何か、裁判は今どのように進行しているかなど詳しい説明がありますので、ぜひ説明会にも参加してください。

【メモを取ることは自由です】

傍聴人は法廷で録音したり、写真を撮ったりすることは禁じられていますがメモをとることは自由です。

以前はそれも禁じられていたのですが、米国人弁護士ローレンス・レペタさんの「メモ採取不許可国家賠償(昭和63年(オ)第436号)」の最高裁判決で、1989年より、解禁されました。 最高裁は国家賠償の請求は退けたのですが、「筆記行為の自由は憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきであるといわなければならない」として、メモを取る行為自体について、「故なく妨げられてはならない」、「メモを取る行為が法廷における公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げる場合には、それを制限又は禁止することも許されるが、そのような事態は通常はあり得ないから、特段の事由がない限り傍聴人の自由に任せるべき」と判示しました。 レペタさんのお陰で、メモがとれるようになったのは日本人として恥ずかしいことながら、傍聴人として裁判に参加する身にとってはとてもありがたいことです。

【国賠裁判の流れ】

裁判の様子を理解するために国賠裁判の大まかな流れと特有の用語を挙げてみましょう。

国賠裁判は民事訴訟法という法律にもとづいて進行します。

訴えた側、国賠裁判では市民の側を原告、訴えられた側、国や自治体などの側を被告と呼びます。 原告になろうとする市民は、裁判所に訴えの理由とどんな判決を求めるかを書いた訴状を裁判所に提出します。

裁判所は訴状を、訴えられた国や自治体など被告に送付し、被告は訴えに対する考えや立場を主張した答弁書を裁判所に提出します。

裁判所は答弁書を原告に送付するとともに審理(口頭弁論)を行う日時と法廷の場所を指定します。 裁判所が事件を調べることを審理と呼び、法廷でする審理を口頭弁論と呼びます。

こうして裁判が始まります。

裁判所は原告と被告という当事者双方の主張を聞き、当事者の提出した証拠や証人を調べます。

裁判所が事件を調べることを審理と呼び、法廷でする審理を口頭弁論と呼びます。

そして判決を書くのに十分な主張や立証が行われたと裁判所が判断すると口頭弁論は終了して判決が出されます。

私たちが法廷で見ることができるのはこの口頭弁論と判決の言い渡しです。

【傍聴人の役割】

当事者でない人が裁判を見ることを傍聴、見ている人が傍聴人です。

裁判官が証拠や法律を尊重しないで恣意的な裁判をすることがないように、裁判は市民に公開されます。その公開の法廷で公正な裁判を行うように監視するのが、傍聴人です。

傍聴人は公正な裁判が行われるように立ち会うというとても大切な役割を持っています。

特に国賠裁判の場合、国家の一機関である裁判所の職業裁判官はどうしても同じような立場の政府や自治体など国家機関の側の肩を持ちがちです。そうしたエコヒイキが行われないよう市民が直接法廷で裁判官の裁判指揮を監視するというのは国賠裁判が公正に行われるようにするために不可欠な行動です。

ぜひ国賠裁判を傍聴してください。