9/19 第2回口頭弁論報告 「よど号」”拉致”逮捕状の撤回を求める国賠

 被告「これ以上の主張はない、結審すべき」。裁判長「原告主張に反論すべきところは反論すべきではないか」。被告「・・・裁判所がそうおっしゃるのであれば・・・」

 原告第2準備書面を提出

東京地裁民事30部(菅野雅之裁判長、篠原礼裁判官、樺山倫尚裁判官)の611号法廷、午前10時45分から定刻通り開廷。被告東京都は代理人5名、原告代理人は前田弁護士、大谷弁護士、渡邊弁護士が出廷。傍聴人は報道関係者(NHKのみか)を含めて約20名。傍聴席にはテレビ朝日の番組で有本恵子さん両親の前で八尾恵が土下座、偽証を実演させたプロデューサー(当時)の姿も。被告東京都の答弁書、特に「捜査の密行性」の主張に反論した原告第2準備書面の陳述が行われた。また、原告から『”拉致疑惑”と帰国』(河出書房新社から発売中)が書証(甲17号証)として提出された。前回弁論から被告は「これ以上の反論は必要ない」と審理の打ち切り(結審)、実質的な「門前払い」を求める態度をとり続けてきたが、ここへきて裁判長は被告に対して再「反論」の必要性があるのではないかと、被告に再考を求めた。以下は法廷での、そのやりとりである。

裁判長:「被告は原告第2準備書面への反論は何かありますか?」
被告:「特に反論はない、従前に主張した通りだ。早期に結審していただきたい」
裁判長:「原告は、本件は最高裁判例とは一致していないと主張している。被告側で(原告)主張(争点)を整理し、原告主張に対する反論をしたほうがよいのではないか・・・」
被告:「・・・裁判所がそうおっしゃるのであれば・・・書面を提出する。1か月半の時間をいただきたい」
前田弁護士:「原告代理人としては裁判所の判断に従うが、入口のところでの論争であり前回の求釈明についても答えてもらいたい。新たに被告の書面がでたところでさらにそれに対する書面を提出していきたい」

  被告東京都は原告の主張に答えるべき

 裁判長は被告に対して「原告の主張を整理したうえできちんとは答えるべきだ」。これに対し被告は、渋々これを受け入れ、書面を提出することになった。被告が正当とする最高裁判決(小山事件)への原告の反論は以下の6点だ。①国賠請求を制限するには法律の規定が必要であること ②国賠請求の制限の理由 ②立証活動が捜査書類の提出に限定されないこと ④「捜査の密行性」が侵害されるというが内実が伴っていないこと ⑤民事上の権利が不当に侵害される可能性があること ⑥民事訴訟の提起と審理自体を制限する理由はないこと(原告準備書面から)。かかる原告主張に対して被告はきちんと答えてもらいたいものだ。

被告は逮捕状請求行為の違法を理由とする国賠訴訟には時期的に制約があるとするだけで国賠訴訟を提起すること自体は否定していない。原告は国賠提起の時期を制限する法的根拠はないと主張しているにすぎず、「捜査の密行性」という制度上の制約の中でも逮捕状請求の違法を理由とする国賠訴訟は審理すべきる。国賠請求自体を許容しないとする理由はなく、法が許容していないとする被告の解釈は現行法の規定からは導けないものである。国賠請求自体を封ずるという方法で“捜査の密行性”を保護しようとする発想であって余りにも政策的な解釈である(原告準備書面から)。次回弁論までに提出予定の被告の主張(書面)に注目である。

今回の裁判所の対応(訴訟指揮)は当然であろう。「十分に審理がなされていないままでの結審はありえない。裁判所もこのままでは判断はできない、ということであろう」(前田弁護士談)。原告としては何としてでも事実審理(八尾偽証などを根拠とした逮捕状請求行為の違法性の実質審理)に踏み込ませたいところである。裁判所が次回弁論以降どう判断するのか、注目されるところだ。とりあえず被告の意図を挫かせ早期結審の壁を突破したということ、一歩前進だ。次回口頭弁論期日は11月18日、午前10時開廷、東京地裁411法廷。

 外務省が審査会に諮問―審査会事務局との打ち合わせ
 弁論終了後、情報公開申請人と内閣府の情報公開・個人情報保護審査会の事務局に出向き、担当者(堤氏)と打ち合わせした。本件は第二部会が担当し、すでに事務局では日朝実務者会議に関する9件の文書(2012年11月9日、2004年8月、同年9月、同年11月の同会議文書)を外務省から取り寄せ申請を行っているという。インカメラ方式をとり審査会委員が閲覧し判断するということである。これはわれわれが氷見冤罪事件国賠でもやってきた富山県(警)の情報公開(審査会)方式と同じである。黒塗りであったが膨大な資料(捜査指揮簿など)を開示させ、国賠でも威力を発揮してきた。氷見事件のように申立人(補佐人)の意見陳述などのシステムはなく文書のみで決定するようだ。ただ、第二部会委員(3人)には情報公開に積極的なメンバー(弁護士、日弁連の可視化本部のメンバー)も入っているようでゼロ回答はないのではないか。と思われる。日朝実務者会議関係文書(議事録など)、特に「“よど号”はヨーロッパ拉致には関与していない」との朝鮮側の発表などの文書などは是非、精査してみたいものだ。今後も積極的に事務局に働きかけていくつもりである。

9月24日には外務省の行政文書の不開示は、情報公開法5条3号に該当しないという意見書を提出した。①報道もされており、国の安全が害される内容とは思えないこと ②国の安全を害する部分のみ不開示にすれば足りること ③信頼関係を損なうとの具体的理由がないこと ④交渉上の不利益が生じるとは思えないこと 以上の4点から外務省の不開示理由に反論した。意見書を是非、読んでみたいという方は連絡を。(井上記)

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