富山(氷見)冤罪国賠 10月21日第22回口頭弁論(富山地裁) 原告本人証言始まる

2009年5月に提訴された氷見事件無罪国賠は、第18回まで準備書面のやりとりと証拠開示の攻防が続いた。19回(13年3月)から証人調べが始まり、採用された9人の捜査関係者のうち7人が終了したところで原告・柳原さんの証言が始まった。

原告証言の意味

原告の証言は2つに分けられることとなり、前半は「違法性」、後半は「損害論」ということになった。国賠訴訟では要するに国(検察)や県(警察)がいかに違法な(法律・規則を逸脱した)捜査を行なったか、それは過失か重過失か故意かを立証するため、柳原さんの場合はいかに理不尽な取調べがあったか、警察・検察・裁判官・弁護士が寄ってたかって原告に冤罪を押しつけた、その実態を明らかにするための本人証言という位置づけになる。原告が任意取調べに連行されるところから始まって起訴され実刑3年の判決となるまで、それにプラスして冤罪が明らかになった際(2007年1月)「再審のために必要」として検察官が再度柳原さんに対して全く任意性のない検察官調書を多数作成した酷さも違法性として取り上げた。

別の期日に予定されている損害論は、事件を押しつけられたことによる逸失利益、刑務所の処遇・更生施設の実態、そして出てきた後の社会復帰(就職など)の困難、PTSDが今日まで続いている事実を証言することになる。

10月21日の顛末

富山地裁には、東京・山形などから国賠ネットの仲間が十数人傍聴に駆けつけてくれた。柳原さんを励ますため、足利事件の菅家さん、志布志事件の川畑さんも来てくれた。

前もって提出してある「陳述書(1)」に沿って、主尋問は比較的スムーズに進行し、予定どおり約1時間半で終了した。柳原さんの声も大きく内容もよかった。翌日の新聞記事は、取調官・長能善揚の酷い言葉を見出しに掲げ、罵倒の一覧表まで掲載された。「ばか者」「うそをつくな」「被害者が死ねと言っているからお前死ね」「お母さんも泣いているぞ」「姉さんが間違いないからどうにでもしてくれと言っている」「今後俺の言うことにハイかウンしか言うな」等々。

新聞は提訴の頃は、全紙が警察発表どおりに「誤認逮捕された柳原さん」という常套句を使っていたが、最近やっと「再審で無罪となった…」と形容するようになった。そこまでいくのも大変という実例だ。

反対尋問で体調不良に

反対尋問は、原告にとって意地悪な質問になるだろうと予想されてはいたものの、全く腹立たしい質問が続いた。しかし裁判というものは、主尋問の範囲内である限り反対尋問にさらされて、どれだけきちんと答えられたのかが鍵となる。反対尋問をしないでくれと言うことはできない。

柳原さんの場合、任意取調べのあいだに、事件当日のアリバイとなる電話通話の記憶を長能刑事に述べたにもかかわらず無視された、それを言ったのは取調べの1日目だったか2日目だったか、どのような言葉で主張したのかという、ある意味では非常に細かい部分に反対尋問が集中した。被告・警察側は、柳原さんの記憶の曖昧さを捉えて、きちんとアリバイ主張をしなかったのではないか、だから警察が間違ってしまったのも仕方がないと主張したいわけだ。

しかし開示された「捜査指揮簿」によれば、任意取調べの第1日目の欄に「犯行を否認し」3月事件の「犯行時間帯は自宅にて一人でいた」と供述していると明記してある。当然ながら自白の前だから供述調書は無い。

取調べにさらされていた当時の柳原さんにとって、事件の内容説明もないままただ「やっただろう」と責められるその事件の時間帯がいつなのかも明確ではなく、徐々に「そういえば、その日会社の社長や金沢の姉のところに電話したな」とだんだん記憶を喚起していったであろうことが推察される。はじめから「私のアリバイは○時から○時まで電話をしていたから私は犯行現場に存在できない」などと文章を書くように明確な言葉が柳原さんの口から出たと考えることのほうが不自然だ。犯行時間帯を明示することもなくアリバイの有無を問うこと自体が理不尽だ。

こうしたアリバイをめぐる問答が続くうちに、柳原さんの声は小さくなり、傍聴席から見ても顔や頸部の色が赤黒くなっていくのが分かった。そのうちに柳原さんは胸を押さえ、「心臓のあたりが痛い」と言い、吐き気を訴えた。そのため休憩となった。再開後もしばらくして更に酷い状態となり、再度休憩となって医務室に寝かされた。その後、いよいよ無理となって次回に延期となった。現在も柳原さんは通院して、原因を医師に診断してもらっている。

こうした心理的な要因からの体調不良が、取調べ等の被害のPTSDであることは明らかと言うべきだろう。 (by yamagiwa)

 

【今後の日程】

2013年12月16日原告本人反対尋問

2014年2月17日被告長能(警察官)尋問

2014年4月21日 被告松井(検察官)尋問,原告本人尋問(損害部分)

 

 

 

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