富山(氷見)冤罪国賠 第21回口頭弁論 ―ずさんな捜査指揮、明らかにー

 富山(氷見)冤罪国賠 第21回口頭弁論

                                               ―ずさんな捜査指揮、明らかにー                                 

 8月19日の富山市の最高気温は37.5。証人尋問3期日目となったこの日、富山県警科捜研技術吏員の高木貴志、氷見署長の松山美憲、捜査1課課長の福岡雅夫(いずれも2002年当時)の3人が富山地裁の証言台に立った。傍聴希望者60人に対し、傍聴席は35席。猛暑に負けない熱い攻防が繰り広げられ、ずさんな捜査指揮が浮き彫りになった。

■B型物質は存在しない可能性認める

高木は、氷見第1事件の被害者下着に精液付着の有無、付着している場合の精液の血液型鑑定を担当した人物。鑑定結果は「人精液の付着が推定されるが、その血液型は不明」というものだった。

尋問の焦点は、鑑定書に添付された血液型検査の成績表の読み方。弁護団は、血液型A型の被害者の細胞片などと犯人の精液の混合している下着であり、付着精液は「AまたはO型」と鑑定されるべきとの立場から質問を繰り広げたが、高木は「精子の量が少なく、判断できなかった」などとノラリクラリ。「B型物質が存在しない可能性がある、と言えるではないか」と贄田弁護士が追及すると、高木は「(可能性は)あります」と渋々認めた。柳原さんはAB型(後に判明した真犯人はO型)のため、柳原さんが容疑者として浮上した時点で、捜査側がこの高木鑑定を十分検討していれば、柳原さんは早い段階で容疑者から消え、逮捕にも至らなかった可能性が強まった。

高木はまた、当時の県警科捜研にはDNA型鑑定の機器はそろっており、混合資料から精子のみのDNA型鑑定も可能で、氷見署から依頼があれば「実施していた」と証言。下着の保存やDNA型鑑定を科捜研に嘱託しなかった氷見署長らのずさんな捜査指揮が浮かび上がった。 

■似顔絵捜査は1月から

02年1月14日に発生した氷見第1事件では、被害者証言を基にその日のうち犯人の似顔絵が作成されていた。3月13日の第2事件でも同様。ところが、3月末になって代行運転会社などに似顔絵2枚を持って聞き込みし、柳原さんの名前が浮上した、と被告県は説明してきた。

しかし、松山、福岡ともに「第1事件の直後から似顔絵捜査は実施したと思う」「捜査のセオリーとしてやったはず」「タクシー業者などにも聞き込みしていると思う」と証言した(ただし、2人とも3月異動で署長や1課長となったので1月時点では捜査に関与しておらず、捜査引継ぎを受けて証言している)。1月にも似顔絵捜査しているとすると、なぜ3月末になって初めて柳原さんの名前が浮上したのか、当初からの疑問がますます膨らんできた。柳原さん浮上の真相はまだ見えてきていない。

 ■靴の虚偽報告

氷見第1、第2事件の現場には、ともに犯人が残したコンバースの足跡があった。4月初めには、足跡に同一の摩耗痕が見つかっており、連続犯と断定していた。そこへ「柳原の自家用車の中にコンバースがある」との捜査報告が上がってきた。ところが、自宅や車を捜索(4月8日)しても柳原さんの周辺からはコンバースは出てこなかった。

松山はこの日の証言で、「(柳原さんの)車に靴(コンバース)がある」という捜査報告は附木(つけぎ)という氷見署刑事課係長によってもたらされた、と証言した。それは虚偽報告ではないか、と多賀弁護士が迫ったが、松山は「彼に限って絶対ない。彼は抜きんでて誠実な人物だ」などと述べ、法廷の失笑を買った。最終的に柳原さんはコンバースを自宅前で燃やしたと虚偽自白するのだが、燃焼実験をしたのか、燃焼物の鑑定を科捜研に依頼したのか、と問われて松山は「(実験は)していない」「鑑定を依頼していない」と証言し、自白の客観的な裏付けを取っていないことを認めた。これもまたずさんな捜査指揮と言える。

 ■類似事件を無視

柳原さんが氷見署に留置されていた5、6月に、隣県の石川県でコンバース足跡を残す強姦事件が起き、8月には類似手口の氷見第3事件が起きた。松山は、靴を確認させたが「色、デザインが違うと報告を受け、問題ないと思った」と証言。福岡は「(検挙済みの氷見第1、2事件と)比較する必要はなかった」と強弁し、柳原さんの冤罪に気づくべきチャンスを逸したことに反省の言葉は聞かれなかった。

次回弁論は、10月21日午前10時から。原告柳原さんが取り調べの違法性について証言する。(傍聴報告 菅野良司)

 

 

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